化粧

電車の中で、女の人が、化粧をしているときがあった。暑い時期だし大変なんだろうなと思うのだけど、内心どういう気持ちでやっているのだろうか、なんて思いを馳せることもあった。
やはり義務として、最低限のたしなみとしてしているのだろうか。一概に一括りにはし難いのだろうな。やはり色々な人がいるんだろう。その中には、多分恋する女の子もいて、認められたくて、さりげなく可愛いねって褒められたくて、やっているのだろうか。僕が名前も顔も知らぬ、誰かの為に。綺麗だねって、素敵だねって、そう言われる度に、嬉しくなって、もっと綺麗になりたい、もっと可愛いって言われたい、なんて思ったりするのかな。まるで僕みたいだな。自分の書いたものを、凄いね、素敵だねって言われたくて。そんな事を夢想しながら、ひたすら唯書き連ねる日々。ある意味では可愛くあることを強いられているのかもしれない。そして、響かないことに絶望するのかもしれない。それでも彼女は化粧をやめないのだろうか。多分やめないんだろう。そんな事を考えながら、つい電車の向かいで化粧をしている女の子を、とても可愛いな、なんて思いつつ見つめていたのでした。