2008-01-01から1年間の記事一覧

鏡像

私は男でした。そして、思い付く限り、私よりも美しく、心奪われる女性はいませんでした。詰まる所、私は女装というものに心を奪われていたのでした。私はその姿に言いようの無い背徳感を覚えていました。それは濁った蜜のような物です。強烈な匂いと、甘味…

祈り

「ねえ、神様が私たちを作って、そして私たちを好きでいるなら、どうして神様は私たちが病気になるのをほうっておくの?」 娘が尋ねてきた。5歳になる私の娘は、このままいけば確実に学者になりそうだ。好奇心を全方位的に向けられると、それに答える方に、と…

ネットが逆立ちしても、本に勝てない理由

はじめに 最近、ちょっと情報の摂取を控えようかなと考えている。というのも、何というかあんまり意味が無いような気がするのだ。本を読んだ方が頭に残り易い。それに無駄に時間が吸い取られるし。これはどういうわけなのだろうか、と最近ちょっと考えてみた…

Twitterを再開。

最近なかなか起きるのが遅い。頭を鷲掴みにして離さないような強烈な眠気に連日襲われて、結局二度寝入りすることもしばしば。それでもそのまま2,3時間ひたすら昏々と眠り続けていた時期に比べると幾分マシになった。振り返ってみても相当人間らしい生活…

「あたし彼女」が熱いらしいので

http://nkst.jp/vote2/novel.php?page=1&auther=20080001「あたし彼女」現代語訳 - 藤棚の上 最近ケータイ小説が熱いらしいので、俺も便乗してみることにしました。という事で一章だけ現代語訳してみたぜ!*1 第1章 アタシはアキ。歳、23。もうすぐ24にな…

14歳の君へ。

プロローグ もしこの文章を読んでる君が14歳だったら、まず最初に伝えたい事があるんだ。これはとても傲慢で自分勝手なのかもしれないけど、僕が君の歳のとき、こんな亊を言ってくれる大人が側に居たら、寄り道なんてすることはなかったかもと思って、今書い…

語りえぬもの

語りえぬものには沈黙しなければならない、そうウィトゲンシュタインは言った。僕はその意味の発するところを必ずしも正確に理解しているわけじゃないけれど、曖昧な、極めて日本的な理解ならしていると言ってもいいのかもしれない。 語りえない、描写のし難…

化粧

電車の中で、女の人が、化粧をしているときがあった。暑い時期だし大変なんだろうなと思うのだけど、内心どういう気持ちでやっているのだろうか、なんて思いを馳せることもあった。 やはり義務として、最低限のたしなみとしてしているのだろうか。一概に一括…

部屋と夏と僕

じりじりとにじり寄って迫ってくる夏に辟易としながら、外に出ることなく鬱屈した思いを抱えてひたすらPCに向き合い文章を打ち込む。部屋はとても狭く感じられる。三分の一ぐらいの表面積をベッドが占め、そしてそれに次ぎ、細々とした家具、冷蔵庫や、ゴミ…

ラプンツェル

気がつくと私は、塔の中にいました。 塔の中は決して狭すぎるということはありませんでしたけれども、なんと言うか空気が澱んでいてとても居心地の悪いものだった、そう思えるのは塔を抜け出してのことでした。 ですが、私にとってはこれが初めて与えられた…

パラダイス・ロスト(1)

どうしてだろう、こんなことを考えたのは。僕はなぜこんなことを考えていたのか、自分でもよくわからなかった。唯一つ言える事は、このなかには真実と呼べるような純真で混じりけのないものなど、何もないということだけだった。それは打算と混乱と後悔に満…

過ぎない夏

夏。茹るような暑さで、体中の水分という水分が無くなるかという中、僕は自転車を走らせていた。ちょうど峠の半ば。ふと顔を下に向けると、アスファルトが日光を一心に受け止め、その温度はおそらく想像を絶することになってるのだけは容易に予想がついた。…

白昼夢

夢を見なくなった。いや、見ているのかもしれない。どうやら窓から光が僕を起こしにやって来るのと同時に、存在の不確定な僕の夢は、光と共に消えてしまっているようだ。そういうわけだから僕は寝ることを無意識の冒険の時間としてというよりは、むしろ純粋…